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PHANTASM_DANCE_HALL (SIDE : KONOHA_YAMADA)
by Itsuki_taniori
◆◇◆◇木立の守り人◆◇◆◇
不用意に森を侵そうとした人間を、神通力で脅かし、追い払う。
森に慣れ始め調子に乗った若い狩人が、
ヒトに踏み入ることを許した領域を超え、
奥へと踏み入ってきたのだ。
狩人は数本の矢を放って抵抗したが、
それらはコノハに触れる直前に、不自然に軌道を変えて地面に落ちた。
「最近、思い上がった人間が増えてきましたね。やれやれ……」
逃げていった狩人に顔を顰めながら、
彼に追われていた小鹿に目をやる。
小鹿もまた、コノハを怯えた目で見て逃げていった。
コノハはため息をついて、
寝床として使っている木の洞に身を横たえた。
――コノハは、森の化身である。
森に棲まう神の意思を伝える者であり、自然を代弁する者。
もちろん、その身体能力はヒトなどの比ではなく、
強力な神通力を以てすれば、惑わすも狂わすも思いのまま。
獣を守る存在ではあっても獣ではなく、
そしてもちろん、ヒトでもない。
コノハは、そんな境遇に対して、どういった感情も抱いていなかった。
孤独ではあったが、それを寂しいと思ったことはなかったし、
それは当然のことだとも思っていた。
気まぐれに訪れた洋館で、
たまたま出くわした少女と手を取り合って、戯れに踊った。
あの夜までは。
「…………」
次の朔まで、あとひと月。
コノハが生きてきた歳月からすれば、ほんの瞬くほどの時間。
けれど、今のコノハには、その時間が永遠に等しく感じられた。
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